辺民小考

世の中の片隅に生きていますが少しは考えることもあります ― 辺民小考

宗教法人の固定資産税非課税について

 政府(文部科学省)が旧統一教会に対する解散命令を請求する方向で検討に入ったという報道があった。衆議院解散・総選挙の前の支持率上昇を狙ったものだという観測もあるが、選挙前のパフォーマンスやバラマキはいつものことなので、今更文句を言う気にはならない。また、今回は旧統一教会についての話でもない。ただ、この報道で以前に考えていたことを思い出したので、そのことを書いてみる。

 

 以前に考えていたことというのは、宗教法人の境内地には固定資産税が課税されない、ということについてだ。このことを考えたのは、ウォーキングを始めた頃だ。ウォーキングの時には寺や神社や教会に立ち寄ることも多いが、部外者の立入りを禁じているところもあり、そのことと固定資産税非課税ということの関係について思いを巡らした。

 

 ほとんどの神社や寺は誰でも境内に自由に入って行けるし、教会も信者じゃなくても敷地や礼拝堂に入れるところが多い。それで、あまり深くは考えずにそういうものだと思っていた。ところが、一部の寺やいわゆる新興宗教の施設の多くは部外者立入禁止になっている。そういうところに何度か出くわすと、逆に多くのところが誰で入れるようになっているのは何故なのかと考えるようになった。神社や寺は昔から地域の人達が自由に出入りする場所だったので、その習慣が今に続いている面があるだろう。また、教会や一部の新興宗教では入ってくる人を潜在的信者と考えて門を開いているのかもしれない。あるいは、宗教団体の側が少なくとも境内地は広く一般に開かれているべきだと考えていることもあるだろう(観光地となっている寺院では拝観料と称して入場料を徴収する目的もある)。いずれにしても、自由に入れるということは(入場料が必要だとしても)公共性があると言えるだろう。そこまで考えて、固定資産税のことを思い出した。そうか、公共性がある場所だから、固定資産税が非課税になっているのか。すると、部外者立入禁止にしている宗教法人はおかしいと思えてきた。。

 

 宗教法人は僕が考えたように公共性があるから固定資産税が非課税なのか? その疑問が浮かんだので法律を調べてみることにした。固定資産税は市町村税だから、地方税法に宗教法人を固定資産税非課税にする根拠があるはずだ。地方税法を見ると、第三百四十八条にその根拠があった。その条文は非常に長く、固定資産税の非課税の団体として大変多くのものが挙げられている。ここですべては挙げきれないが、学校法人、医療法人、公益社団法人、公益財団法人、社会福祉法人などと並んで、宗教法人が非課税の団体となっている(宗教法人で非課税な固定資産は「専らその本来の用に供する境内建物及び境内地」に限られるが)。この条文に挙げられた宗教法人以外の法人をみると、いずれも公共性があると考えられているものであることが分かる。従って、宗教法人の境内地や境内建物の固定資産税が非課税なのは公共性あると考えられるためだろうと確信した。

 

 しかし、公共性のある法人の施設はすべて自由に立ち入れるわけではない。学校も自由に出入りできることが多い大学を除くと部外者立入禁止が普通だし、公共施設もその施設の利用者以外は立入禁止になっていることも多い。では、宗教法人が部外者立入禁止とすることは当然なのだろうか。どうも私には、学校や公共施設が部外者が入るのを禁止することと、宗教法人が信者以外を締め出すことは同様のこととは思えない。他の公共施設がその施設の利用資格がある人に利用を限定することと、特定の宗教を信じる人だけに利用を限定することはかなり違うのではないか。特定の宗教を信じる人だけに利用を限定した途端に公共性はなくなっていると言えないか。境内を広く一般に開放していわば公共の場所にしている神社や寺も多いとこを考えると、宗教法人は常に公共的なのではなく、公共性をもって運用することもできるが、非常に閉鎖的にも運用できるということではないか。

 

 憲法は第二十条で信教の自由を保障している。従って、どんな宗教法人もその法人の持つ施設の境内や境内建物を使って儀式行事や宗教上の行為を行うことを妨げられないことは当然だ。それらの儀式行事や宗教上の行為が部外者の立入を許さない形で行うことに何の問題もない。しかし、信教の自由を保障することと、宗教法人を優遇することは別のことだ。宗教法人だからとといって、それだけを理由として税制優遇するのはおかしいと私は思う。そうではなく、宗教法人が公共性を有する範囲において、その公共性ゆえに税制優遇するという考え方であるべきだろう。

 

 以上のことから、宗教法人の固定資産税についての私の提案は次のものである(提案しても誰も取り上げてくれないとは思うが)。

  宗教法人の所有する境内地および境内建物は、一般公衆が自由に出入りできる
  部分についてのみ固定資産税を非課税とする。
  (信者等の関係者に利用を限定する部分には固定資産税を課税する。)

 

 なお、宗教法人の税制優遇については、固定資産税以外に、宗教活動に伴う収入が非課税になっていることがある。これについても少し考えた。詳細は省くが、こちらの方は公益性の問題よりも信教の自由の観点から考えるべきだと思い、今のところ課税すべきだという結論にはならなかった。